VR開発用PCの選びかた
最終更新日:2021年07月28日記事作成日:2016年06月12日
VR開発に必要なPCの選びかたについてまとめています。
更新履歴
(2021年7月28日)タイトルを変更、全体的に記述をアップデート
(2018年11月18日)全体的に記述をアップデート
(2016年12月18日)「ノートPCはどうなんですか?」にゲーミングノートの駆動時間について注記、「Macじゃダメなんですか?」に関連記事を追加
(2016年10月28日)ノートPC関連の記述を更新
(2016年8月20日)GeForce GTX 1000番台のゲーミングノート発表を反映
はじめに
まず結論から言えば、HTC ViveやOculus Riftを使用するには、高性能なGPUを搭載したWindows PCが必要です。ビデオカードを搭載するため、基本的にはデスクトップPCになりますが、VRができるゲーミングノートPCも増えてきています。
また、HTC Viveでは「空きHDMI端子とUSB 2.0/3.0端子×1」、Oculus Quest(Oculus Link接続)では「USB 3端子」が必要です。
市販のPCを購入する場合、GeForceやRadeonを搭載したゲーム用PCを選びます。NVIDIAのGPUであれば、GeForceの2000番台もしくは3000番台が必要です。普通の家電量販店などにはまず置いてありませんので、通販やPC専門店で購入することになります(「ゲーミングPC」で検索してみてください)。最近はGeForceの「VR Ready」のロゴが入っていたり、VR対応をアピールしていることもありますので、ショップに確認するのがおすすめです。もちろん、PCを自作できるなら自分で組み立てても大丈夫です。
OSはWindows 10の64bit版にします。
展示やデモに用いる場合、上記に加えて運搬しやすい省サイズのものを検討することになります。
その他、必須要件ではありませんが、開発用途であればCPUもRyzenのミドルレンジ以上等できるだけ高速なものが望ましいです。メモリも16GB以上あったほうがいいです。ストレージもSSDにすると快適ですが、その場合、Cドライブに最低でも240GBか480GB以上確保するようにします。
以下、詳しく説明します。
ヘッドセットはどんなふうに接続するの?
VRのランタイムとなるSteamVRやOculusソフトウェアをPCにインストールします。ヘッドセットにはDisplayPortまたはHDMIで接続しますが、Windowsには通常のディスプレイとしては認識されず、ビデオカードのドライバ経由で映像がダイレクトに出力されます。
また、ヘッドセット内蔵のセンサーやマイク・ヘッドホン、位置トラッキングカメラ等とやり取りをするためにUSB接続が必要になります。
なぜ高性能なGPUが必要なの?
VRでは、左右両眼の2画面の画像を高フレームレートで描画する必要があります。通常の3Dゲームも高性能なGPUがないと動きませんが、VRではさらに何倍ものグラフィックス性能が必要になります。
重要なことなのですが、VRでは基本的に最大フレームレートを常時キープする必要があります。家庭用ゲーム機のゲームでよく、60fpsで動きをなめらかにするか、30fpsでグラフィックスを綺麗にするかという論争がありますが、VRではフレームレートが低いと頭の動きと視界の不一致で酔います。また、没入感も大きく損なわれます。 60fpsでは足りないということで、より高いリフレッシュレートのディスプレイパネルが使用されています。通常の3Dゲームのように、低フレームレートでも動けばいいというわけにはいかず、高いグラフィックス性能が必須となっています。
ノートPCはどうなんですか?
GeForceを搭載したVR対応のゲーミングノートが増えてきました。NVIDIAの「VR Ready」の表示があるか、VRをサポートしているかショップに確認するのがいいでしょう。
なお、VR Ready性能のゲーミングノートは電力食いで、バッテリー容量にもよりますが、通常使用で4時間程度、VRソフト使用時で1時間程度の駆動時間しかありません。一般的なノートPCのような長時間運用はできませんので注意してください (2018-11追記:その後状況が変わっているかもしれません)。電源接続しないとGeForceが有効にならない機種などもあり、モバイル用途に制限が発生しますので要確認です。
どれくらい高性能なGPUが必要なの?
GeForceの2000番台、もしくはGeForce GTX 1060/1070/1080が必要ラインになります。
3DMarkによるGPUのベンチマーク値一覧と、参考機種です。あくまでおおまかな目安として考えてください(2018-11表が古いので更新します)。
GPU | 3DMark | 参考機種・備考 |
---|---|---|
GeForce GTX 980 Ti | 24620 | |
GeForce GTX 1080 | 24390 | |
GeForce GTX 1070 | ||
GeForce GTX 980 | 18510 | NEXTGEAR-NOTE i71000 |
GeForce GTX 1060 | ||
GeForce GTX 970 | 15710 | (VR Readyスペック) |
Radeon R9 290 | 15260 | (VR Readyスペック) |
GeForce GTX 980M | 12630 | GALLERIA QSF980HGS、NEXTGEAR-NOTE i5910 |
GeForce GTX 970M | 10220 | NEXTGEAR-NOTE i5710 |
GeForce GTX 950 | 9100 | |
GeForce GTX 750 Ti | 5690 | (デスクトップPC用ミドルレンジ) |
Radeon HD 7770 | 4110 | |
GeForce GT 750M | 2590 | 15" MacBook Pro Retina (Mid 2014、Late 2013) |
Intel Iris Pro 6200 | 2240 | |
GeForce GT 650M | 2170 | 15" MacBook Pro Retina (Early 2013) |
Intel HD Graphics 6000 | 1333 | MacBook Air (Early 2015) |
Intel HD Graphics 5000 | 1050 | MacBook Air (Early 2014)、Surface Pro 3 |
Intel HD Graphics 4400 | 740 | Surface Pro 2 |
Intel HD Graphics 4000 | 580 |
長くて2スロットを専有し、補助電源接続が必要なビデオカードが多いので注意が必要です。
Macじゃダメなんですか?
VR開発は現状Windows一択です。 Steamのゲームを中心にハイエンドの3Dゲームが基本的にWindowsメインでリリースされていて、PCのVRもその流れを継いでいるためです。AppleがGPU性能を重視してこなかったこともあり、2015年5月にOculusはmacOSのサポートを打ち切ってしまいました。Oculus LinkもWindowsでしか動作しません。
HoloLensの開発もWindowsが必須ですので、XR開発はこのまましばらくWindowsが基本ということになりそうです。ただし、AppleもAR/VRヘッドセットを開発中という話がありますので、その場合はMacが必要になるでしょう。
Intel MacではBoot CampでWindows 10を動かしてVR開発することもできたのですが、Apple Siliconになってその道もなくなってしまいました。
自分のPCがVR Readyかどうかチェックできる?
SteamVR Performance TestというベンチマークソフトがSteamで公開されています。これを実行すると、実際にVR Readyレベルと比べてどれくらいのグラフィックス性能があるかどうかを確認できます。USB端子などの要件はチェックされないので注意してください。
Windows 10にしたほうがいいの?
Windows 10にはGPUアクセスのオーバーヘッドが低減されるDirectX 12が搭載され、UnityやUnreal Engineも対応を進めています。グラフィックス負荷の重いVRでは大きなメリットのある重要なアップデートになっています。
また、Oculus VRのエンジニアによると、非同期タイムワープへの対応その他についてWindows 10にはさまざまな改良が施されているとのことです。
なお、Oculus RiftをWindows 10で使用する場合、64bit版でなければならないため要注意です。HTC ViveもUnityで64bitビルドしたほうがパフォーマンスが良いため、64bitビルドが推奨されています。
CPUはどうすればいいの?
HTC ViveやOculus Riftの推奨スペックはCore i5クラスとなっていますが、開発に用いる場合、速ければ速いほどいいです。特に3Dのアセットが多いと、UnityやUnreal Engineでのビルド、インポート、ライトマップのベイク、シェーダーのコンパイルなどで長大な待ち時間が発生しますので、CPUの性能が作業の効率や快適さに直結します。
ベンチマークソフトの一つ、Geekbenchのスコアを検索できるGeekbench Browserというページがあります。検索バーにCPUの型番を入力するとおおよそのシングルコア・マルチコア性能が分かりますので、参考になると思います。シングルコア性能が高いとエディタの操作等日常的なオペレーションが、マルチコア性能が高いとビルドやシェーダーのコンパイル、ライトマップのベイク等が速くなります。
2021年現在はRyzenのミドルレンジ以上がおすすめです。
ストレージはどうすればいいの?
システムドライブをSSDにするとHDDより圧倒的に快適なので、特に開発用ではSSDにすべきです。ただ、今のところSSDは容量が少ないため注意が必要です。ゲームエンジン本体、プロジェクトファイル、3Dアセットのどれもかなりの容量を消費します。どれほどヘビーな作業をするかにもよりますが、Cドライブに最低240GBか480GB以上ないと、空き容量の確保に追われることになるかもしれません。
また、1TB以上のデータ用ドライブを搭載して、プロジェクトファイルその他や、Steam・Oculus Storeのゲームの保存先にするといいと思います。こちらも可能ならSSDのほうが快適です。ショップ製だとSSD+SSDの構成を選べるところがまだ少ないようですので、その場合、Cドライブに1TBというのがベストでしょうか。予算次第です。
数年後にはSSDの価格が下がり、容量も増えて、このあたりはもっと楽になっていると思います。
このサイトの中の人は何使ってるの?
自宅では、Ryzen 9 5950X、GeForce RTX 2070のBTO機を開発に使用しています。
モバイルでは、GeForce GTX 1060搭載ゲーミングノートのMSI GS63VRを体験会での展示等に使用しています。HTC Vive、Oculus Rift、Windows MRヘッドセットともに動作し、開発もそこそこ可能です。購入時点ではモバイル向けとしては一番高速なCPU(Core i7-6700HQ)だったのですが、今となっては遅さを感じます。Ryzen 7 5800H搭載のゲーミングノートが気になるところです。
ちなみにキーボードはRealForceの静音モデルを使っています。マウスはLogicool G203です。シンプルで軽くて精度が良く、ゲームエンジンや3Dソフトで多用する中ボタンがきちんと使えるのがお気に入りです。