VR展示のノウハウ
最終更新日:2021年07月29日記事作成日:2016年06月13日
これまでにイベントや体験会でVR作品を展示して1000人近くの方々にヘッドセットをかぶってもらった経験から、個人的に意識しているポイントをまとめてみました。あくまでひとつの考え方にすぎませんので、いろいろアレンジしてみてください。
更新履歴
(2021年7月29日)記述をいくらか更新
(2016年6月16日)VR Coverの所感について追記
(2016年6月15日)いろいろ追記
(2016年6月13日)ページ作成
展示物について
OculusとSteamVRのランタイムはセットアップ時に1GBから1.5GBのダウンロードを行います。ネット接続のない場所で展示する際には、あらかじめセットアップしておく必要があります。普段と違うPCや、借りてきたPCで、現場でセットアップできないという事故があるため要注意です(テザリングで頑張ったことが何度かあります。当然ギガがなくなる……)。
まず手元で展示物を電源接続込みで設営して動作チェックを行い、一式そのまま荷物にまとめると、忘れ物やトラブルが少ないです。また、長時間稼働しても大丈夫かどうか確かめておきます。PCに開発環境を入れて、現場で微調整や不具合対応ができるようにしておくとなお良いです。
フレームレートの確保等、VR酔い対策は必須です。コンテンツを作っている側は大抵慣れてまったく酔わなくなってしまっているので、できれば未体験の人を探してテストしておきます。また、途中で体験を中断したときや、誤ってスタートしたときのために、いつでもリセットをかけられるようにしておきます。
転換時間を含めて、一人あたりの体験時間を意識しておきます。コンテンツは基本的に一定時間で確実に体験が終了するようにします(延々プレイされる方がたまにいます)。内容に応じて「お疲れさまでした。ヘッドセットをはずしてください」「ヘッドセットをはずすまでお待ちください」といったメッセージを入れておいたり、転換している間に自動的にリセットがかかるように作っておくとオペレーションが楽です。
卓上ポップやポスター、ディスプレイ等を使って、作品名や体験内容の概要が分かるようにします。個人展示では、ポスタースタンドにPO.SU.TA.を使用しています。
ベースステーションを使用する場合は振動で揺れないようにします。机に載せる場合は、コントローラー等、振動するものを他に置かないようにします。他の人と机を共有する場合は要注意です。
衛生面について
ヘッドセットをそのまま多数の人に被ってもらうと、汗や化粧が付着し、匂いがこもって不快感を与えてしまいます。対処必須です。考え方としては、主に、
- 防水性の何かでカバーして一人ごとに拭き取る
- 体験者に使い捨てマスクをしてもらう
の2つがあります。
Amazonでヘッドセット用の保護シートがいろいろ販売されていますが、あまり使いやすくないものや、素材のゴムなどの臭いがきついものも多いので実際に買って試してみるのがいいでしょう。
2については、ニンジャマスクという製品が体験会や商業展示でよく使用されています。
いずれにしても、汚れをケアできる布やウェットティッシュを必ず用意し、一人ごとに顔の接触面、レンズ、外装、ヘアバンド等を拭いて手入れをするようにします。行列ができていたりするとあわてて省略してしまいがちですが、手を抜かないようにします。
安全面について
ヘッドセットを被ると、体験者は周囲が見えない状態になります。事故が起きないよう、体験者から目を離さないようにします。
VRに限りませんが、立体視の発達過程にある6歳くらいまでの子供に3D映像を見せるのは注意が必要とされています。Oculusのヘッドセットはさらに安全側に倒して13歳未満注意となっているようです。詳しくは以下の記事を参照してください。
会場について
汗やレンズの曇り対策のため、もし会場のエアコンの温度を下げられる場合は若干下げておきます。
没入を阻害しないよう、静かな音環境で体験してもらうのが望ましいです。会場のBGMやマイクの音量に注意です。密閉型のヘッドホンやノイズキャンセリングヘッドホンを使っても限界がありますので、併催のイベントやステージ等がある場合は気に留めておきます。
体験の流れ
ヘッドセットを被ると何も見えなくなるため、コントローラーなどの操作説明は、基本的にヘッドセットを被せる前に行います。
ヘッドセットやヘッドホンを被せる前に、映像が映っていること、音が出ていることを確認します(コンテンツ側で、待機状態で音が流れるようにしておくと便利です)。音量はあらかじめ適度な大きさに調整しておきます。
ヘッドセットはまずバンドをある程度調整しておき、正面から見やすい位置に当ててもらってから、バンドを後ろにかけるようにします。はずすときは、逆にバンドをはずしてからヘッドセットを前にはずします。
ヘッドセットによってはメガネが入りにくいです。メガネだけ先にヘッドセットの中に入れてもらうと被せやすい場合があります。ただ、フレームが細いメガネは最悪壊れることもありますので、無理して入れようとしないほうがいいです。被せたあとで、圧迫されて痛くないかどうか尋ねます。
トラッキングを確実に合わせます。位置や向きがずれていると体験が大幅に悪化してしまいます。
「ヘッドホンをかけますので耳に合わせてください」と言ってヘッドホンをかけ、合わせてもらいます。3Dサウンドを使用しているコンテンツではヘッドホンの左右を間違えないようにします。
没入を重視する場合、プレイ中の体験者にはできるだけ声をかけないようにします(盛んに声援を送ったりしている光景をたまに見ますが、「現実空間の人間はVR空間には存在していない」ことを忘れないでください)。外からの指示なしでも戸惑うことのないように、音声や表示による指示を入れたり、あらかじめ十分にプレイテストをしておきます。逆に、コンテンツや状況によっては積極的に声をかける場合もあります。
ケーブルにテンションがかからないよう注意します。ケーブルに引っ張られる感覚があると没入の妨げになります。
荷物かごや荷物置き場を用意しておくと便利です。手荷物が持ち去られないか心配する状況だと、安心してVR空間に没入できません。体験後には忘れ物がないか確認します。
周囲で見ている人や、順番を待っている人も楽しめるようにしておくのが望ましいです。大画面のディスプレイを用意する、別視点の映像を表示する、体験者のリアクションで魅力が伝わるようにする等を意識してみるといいと思います。逆に、肝心の部分を隠して期待感を高めるというテクニックもあります。
体験終了後、ヘッドセットをはずした人に「お疲れさまでした」「ありがとうございました」といった言葉をかけますが、「お帰りなさい」を使ってみてもいいかもしれません。
Oculus Questを使用する場合の注意
Oculus VRが、Oculus RiftやGear VRを展示に使用する際のガイドラインを公開しています。厳しい項目もありますが、快適な体験をさせることと、事故を起こさないようにすることが基本軸かと思います。
Oculus Riftはヘッドセット内の中央上に近接センサーがあり、ヘッドセットを被っていないときは動作しないようになっています。展示などで表示しっぱなしにしたい場合は、このセンサーをテープで覆って騙す方法があります。
位置トラッキングカメラは赤外線LEDで位置を推定します。西日などに弱いという話がありますので注意です。
HTC Viveを使用する場合の注意
HTC Viveを複数台並べて使用する場合、ベースステーションの干渉に注意が必要です。詳しくはLighthouseについてを参照してください。
HTC Viveのルームスケールの展示では、自撮り棒の先にケーブルを引っ掛けて取り回している事例を見かけます。